もじゃもじゃと手を動かす

日々の思考のゴミ捨て場

本当は怖い『東京タラレバ娘』

1年半くらい前に先輩に誘われた飲み会で知り合ったMさん。

Mさんは営業職のサラリーマンで、その飲み会の幹事をしていた。

顔立ちも良いし、服装もこぎれいだし、本もそれなりに読む、好青年。

休みの日には誰かに会ってないと気が済まないタチらしく、飲み会でラインを交換してからは、別の飲み会に連れて行ってくれたり、カフェでお茶に誘ってくれていた。


時々2人で会うこともあったわけなんだけど、

神様が間違ったプログラミングしたんじゃないかっつーくらい我儘なワタクシは、何回か会ってわかってしまった、「あ〜〜〜〜この人と喋ってても楽しくねぇ〜〜〜〜」って。


家にテレビがないのなんて今どき当たり前だけど、それにしたってエンタメに疎すぎる。

ミーハー野郎な私は映画『沈黙』を彼が知らないということをどうしても受け入れられない。

クソゥゥゥと思いながらも『沈黙』のあらすじを説明したって、それに対するリアクションが0だったら心の中で悪態ぐらいつきたくなりますよ。


できれば気づきたくなかった、ていうか気づいてもそれなりに軌道修正できるんじゃないかって思ってた。

曲がりなりにも相手から色々お誘いいただいてるわけだし、飲み会開催できるくらいには人脈もあるようだし、話がかみあわねぇって思ってるのは私だけじゃないか。

だったら、私が我慢すればいいんじゃない?それでスムーズな人間関係が成立するんなら、別にいいんじゃない?


わかっちゃいる

わかっちゃいるの

わかっちゃいるけど


耐えられない。


驚くほど鎌田倫子と同じ理屈で私はMさんとの会話が耐えられない。

服がダサいのは別にいい。

貧乏だってそんなの気にしない。

なんなら不倫してたって友達でいられる。

でも話がつまんないのはこの世のどんな物事よりも耐えられない!!!


もうそうなると2人でお茶するってのがどんだけエグいミッションかってことですよ。

これが便利屋に来るような、とりあえず次の予定がある1時間だけ話し相手になってくれないかっつー依頼だったら森山みくりヨロシクいくらでも話しますよ。

時給が発生するならな!!仕事ならな!!


でもこれは仕事じゃねぇええええ

つって断ったりするんだけどもうどうにも断りきれなかったりして3回に1回くらい会うんだけど

その度にあ〜〜〜〜貴重な休日無駄にした〜〜って後悔しきりですよ。

倫子さんよろしく、こんなんだったら家で1人で笑点見てる方が百万倍楽しいとか思うわけですよ。


ってそこまで考えて気づくんです。


あれ?私にはタラとレバがいないぞ?


こんなときタラとレバは何を言ってくれるんだ??


わからんぞ???わからないぞ???って。



タラとレバだったら、会いたくない友達にサラッとその旨伝える術を知ってるんじゃないか、とか思うんですけど。




そうなんです。


私にはタラとレバが見えないんです。だって現実に生きてるから。

私は漫画の中の主人公じゃないから。

そんな都合よく現れて性格の悪い私の思いを叩き直してくれるなんてことはないわけです。



でもそう考えると東京タラレバ娘ってめっちゃ怖くないですか。



タラとレバがまるでこの世に存在する占い師かのように、彼らの言葉に感銘を受けてる女子(おなご)たちはごまんといるわけで。


そういう女子たちは、タラとレバの言葉でまるで自分たちも生まれ変わったかのように錯覚するんではないか、と。


これで私たちの性格も多少は改善されるに違いない、また倫子や香みたいな状況になっても、もう失敗しないって。



そんなことはないって普通ならわかる。

だって現実世界で自分のケースひとつひとつに自分の性格を鑑みた上でアドバイスしてくれる人なんてそうそういない。

ケースバイケースなんてのが人間関係には百万通りくらいあって、タラとレバが倫子や香や小雪に言ってることが、必ずしも当てはまるなんてことはないってことが、普通ならわかる。

それに現実世界でそんなことを言ってくれるのはだいたい女友達だったり親だったりするわけで、それにいちいちショック受けてたら普通に生活なんかできやしない。

忘れるでしょ。忘れちゃうでしょ。

自分の性格とか、ラインの返事の仕方とか、そんなにすぐに直らんでしょ。



でもタラレバ娘は、あまりにもタラとレバの言うことがリアルだから


(これが本当に東村アキコ先生のすごいところだと思う、フィクションの存在に現実的なことを言わせるのって、すごく難しいことだと思うから)



なんだか本当に自分に向けて言ってくれてるんじゃないかって、そんな気に読者はなっちゃうんじゃないかって。


ていうか、私がそうだった。

あれ?タラとレバって私の前には現れてくれないの?ってなるまで気づかなかった。


その錯覚を持ったまま、タラとレバに喝入れてもらって良かった!私、生まれ変わります!みたいな

コンタクトレンズのCMみたいにキラキラ未来明るくなっちゃって

その実なんの改善もしない女子たちを量産してるのだとしたら、それはそれで恐怖やな、と。

それは未来が開けたのでは無く、バーチャルな世界に照明で日が射した演出をしただけのことなんですよ。




これは自戒を込めてですけど、


タラとレバはフィクションだから!


あたしらの世界になんかいねぇから!!


てめえらの問題は自分で解決するしかねぇから!!!!


という気持ちを持って




次回のMさんからのお誘いはシッカリと断り


次巻の東京タラレバ娘も心待ちにしようと思います。